第114章 先に謝る

今夜の伊原綾音は、久しぶりに機嫌がよかった。けれど澄川琉生からの着信が画面に浮かんだ瞬間、胸の奥がすっと冷えて、さっきまでの鬱々とした気分へ引き戻される。

少し考えて、出なかった。

せっかくの夜を壊したくない。そう思って、マナーモードに切り替え、そのまま会話に戻る。

ほどなくして福田黎が戻ってきた。口元には、いかにも愉快そうな笑み。

「先輩、トイレ行ってたわりに顔が明るい。なんかあったでしょ」

江見瑠璃が目ざとく気づいて、からかう。

福田黎は声を上げて笑った。

「さっき、うるさい女をちょっと躾けてきた。気分最高」

そう言いながら、彼は小気味よくグラスをつまみ上げ、みんなに軽く...

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