第121章 狙っている

杏ちゃんはドンドンと扉を叩いた。だが、中から返事はない。幼い頬に浮かんだのは、不安よりもむしろ硬い決意だった。

「奏斗くん、ここで見張ってて。高村おばあさんから鍵を借りてくる。開けるから」

言い終えるなり、短い足でぱたぱたと走り去っていく。残された澄川奏斗だけが、扉の前にしゃがみ込み、何か考え込んでいた。

部屋の中では、叩く音で目を覚ました伊原綾音が、隣の男を慌てて押す。

「早く、自分の部屋に戻って」

澄川琉生は長い腕で彼女を抱き寄せたまま、起きる気配がない。

「見られたっていいだろ。いずれ知ることになる」

子どもたちに二人のことを知られたくない綾音は、焦りで声が上ずった。

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