第129章 オフィスで誘惑する

「どうすればいい?」

伊原綾音は、口をついて出た言葉で返した。

「下にやること山ほどあるの。戻らないと」

男は黙って彼女を見つめたまま、手を離さない。しばし沈黙したかと思うと、またさっきの話題へと戻る。

「西村玲美は、久岡明礼に買われたんだろうな」

伊原綾音の思考も一緒に跳ね、思わず固まった。意外そうに目を見開く。

「久岡明礼の手が、あなたの会社にまで伸びてるってこと?」

彼は鼻で笑う。

「俺がわざと許さなきゃ、あいつにそんな芸当できると思うか?」

――わざと泳がせた、ってこと?

立て続けに起きる出来事が、ことごとく久岡明礼に繋がっていく。伊原綾音は、以前のネット騒動を思...

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