第13章 その女を選んだ

北野隆也は執務室で、契約解除を求めてくる取引先からの電話対応に追われ、完全に手を焼いていた。ようやく一本切り終えたところで、伊原綾音の詰問が耳に入る。苛立った彼は、手にしていたファイルを机に叩きつけた。

「そんなこと、俺が知るか。自分で母さんに聞けよ。お前の相手をしてる暇はない」

北野隆也の表情はあくまで自然で、嘘の影は見当たらない。だが、伊原綾音はまるで信じていなかった。両手を机につき、鋭い視線で彼を射抜く。

「あなたのお母さんが杏ちゃんを連れて行ったせいで、困るのはあなたのほうよ。信じないなら、今ここで一本電話してみる? 明日には雲峰が、澄川琉生に締め出される側になるわ」

凄みの...

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