第137章 やり返し

杏ちゃんは言葉を切り、ふっと顔を上げた。彼の後頭部をじっと見つめ、ぷっくりした唇をきゅっと結んだまま、何も言わない。

澄川琉生はルームミラー越しにその表情を捉える。――やっぱり、この子も母親に似てるな。

「パパ、わたし……あの人のところに住まされるの?」

澄川奏斗が急に声を張り上げ、怯えた目で澄川琉生を見た。

ルームミラーの視線が杏ちゃんへ移り、数秒の沈黙のあと、琉生が口を開く。

「うちに帰る。綾音のところにも、ずいぶん世話になったしな。そろそろ戻らないと」

そういうことか、と奏斗の胸のざわつきは少しだけ落ち着いた。けれど、すぐに意地を張る。

「帰らない。ぼく、まだ住む」

琉...

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