第143章 聞こえた?

澄川奏斗はそれを聞くなりベッドから転げるように降り、ものすごい勢いで浴室へ駆け出そうとした。そこで澄川琉生が、ちょうどいいタイミングで声をかける。

「洗面用具はおまえの部屋にある」

ぼんやりしていた奏斗は、そこでようやく――ここが自分の部屋じゃないことを思い出したらしい。くるりと踵を返し、今度はドアのほうへ走っていく。速すぎて、伊原綾音は口を挟む隙すらなかった。

「見ただろ。あんなに帰りたがってるのに、南園に戻してやらないなんて、できるか?」

琉生が近づき、まっすぐ綾音を見据える。

綾音は俯いてベッドを降りた。

「今、南園に戻したって、いずれまた出ていくことになる。行ったり来たり...

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