第167章 電話に出る男

澄川奏斗はうれしそうに、伊原綾音の首へぎゅっと腕を回した。

綾音は視線を落とし、胸の中の子を見つめる。するとどういうわけか、行方の知れない息子のことが脳裏に浮かび、喉の奥がきゅっと痛んだ。

あの子は――誰かに抱きしめてもらえているだろうか。気にかけてくれる人はいるだろうか。

北野隆也に売られてさえいなければ。いま自分の腕の中にいるのは、この子じゃなくて息子だったはずだ。悔しさと憎しみがいっぺんに噴き上がり、北野隆也と白崎野乃の底意地の悪さが許せなくなる。

いったん感情が荒れはじめると、目の前の子供にまで苛立ちが移ってしまった。

息子は生きているかもわからないのに、どうして自分がここ...

ログインして続きを読む