第25章 好きだなんて

杏がそんなことを口にしたのは、澄川琉生の伊原綾音への好感度を上げておいて、あとで「飴を食べる許可」を引き出すためだったのだろう。けれど当の綾音は眉をひそめ、顔色も冴えない。心配そうに尋ねる。

「ママ、うれしくないの?」

綾音は慌てて我に返った。目の前にあるのは、無邪気で、まだ柔らかい幼さの残る娘の顔。――そろそろ、この子に「自分を守る考え方」を教えなきゃ。自分みたいに、ここまで騙される前に。

そう思い定め、綾音は腰を落として杏と目線を合わせた。

「杏、覚えておいて。耳ざわりのいい言葉って、全部信じちゃだめなの」

「どうして?」

杏は小首をかしげ、きょとんとしている。

綾音は二秒...

ログインして続きを読む