第27章 お姫様抱っこ

澄川琉生は杏ちゃんをひと目見てから、伊原綾音へ視線を移した。彼女は朝と同じ服のままで、体を動かしたせいか額にうっすら汗がにじみ、頬にはきれいな赤みが差している。その顔立ちは、朝よりもなおいっそう人を惑わせた。

澄川琉生はひとつ咳払いをして、喉を整える。

「手伝おうか」

伊原綾音はふっと微笑んだ。

「そんな、澄川社長にご迷惑をおかけするなんて……」

澄川琉生がわずかに眉を上げる。

「そんなに俺が怖い?」

伊原綾音は、どう返せばいいのかわからなかった。それでも気まずさをにじませまいと笑みを作る。

「澄川社長、それは違います。怖いんじゃなくて……敬っているんです」

そう言い残して...

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