第28章 追い払う

「俺を敬うって話じゃなかったか? だったら、機会くらいはやらないとな」

友人の戻りを待っていようとした、そのとき。また彼の声がした。

「まあ、一度だけは例外にしてやる。善行を積むと思えばいい」

「……」

澄川琉生は指先の吸い殻をぽいと捨て、ようやく車のそばへ戻ってきた。

伊原綾音は再び彼に横抱きにされて車を降りる。たちまち頬が熱くなった。こうして男の人に触れられるのは、北野隆也以外では初めてだ。緊張のあまり顔も上げられない。誰かに見られたらと思うと、なおさらだった。

澄川琉生は腕の中の彼女を横目でちらりと見下ろし、口元をわずかに吊り上げる。

一方の杏ちゃんは、たたたっと澄川琉生...

ログインして続きを読む