第30章 写真

翔太は小さな男の子だ。杏ちゃんの耳元に身を寄せ、こっそり囁く。

「澄川奏斗のパパ、来てたんだ。ほかの子のパパたち、奏斗のパパに会ったらみんなペコペコしてたよ」

そう言って、澄川奏斗のほうを見る。

「奏斗、パパにそっくり! 背ぇ高くて、でっかくてさ……なんか迫力あって怖かった」

……

伊原綾音は、美術館の件に全神経を注ぎながら、離婚届が受理される日を待っていた。

そんなある日、北野隆也から電話が入った。

電話口の彼は、会社で彼女がかつて担当していた案件について話したいから会おう、と言う。

伊原綾音は離婚が成立するまで二度と北野隆也に会うつもりはなかった。ひとつは離婚がこじれるの...

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