第35章 彼女のために、怒りをぶつける

翌朝、ひどい隈を二つぶら下げた顔を見て、杏にまで気づかれてしまった。朝食の最中、じっとこちらを見つめてくる。

「ママ、昨日の夜、こわい夢見たの?」

伊原綾音はもともと悪夢を見ることがある。そんな日は決まって、目の下にくっきり隈ができるのだ。

「うん……」

昨夜の夢は、いつもの悪夢なんて比べものにならないほど恐ろしかった。

今まで夢に出てくる男は顔のない存在だったのに、今回は違った。しかもその顔が澄川琉生だったのだから、余計にたちが悪い。

「じゃあ、わたしを学校に送ったら、帰って寝てね」

そう言う杏の優しさが、綾音の胸にじんわり沁みた。

7時半。伊原綾音は杏を車に乗せて送り出し...

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