第37章 吐き気がする

信号が赤から青へ変わり、車列がゆるゆると動き出す。ところが、少し進んだだけで前の流れが鈍り、彼女も速度を落とした。

進んだのはせいぜい十数メートル――次の瞬間、後方で「ガンッ」と鈍い衝撃音。

車体が大きく揺さぶられ、慣性に押されるように上半身が前へ持っていかれる。胸がハンドルにぶつかり、息が詰まるほどの鈍痛が走った。

慌ててブレーキを踏み込む。

体を投げ出すようにハンドルへ伏せたまま、痛みをやり過ごそうとした、そのとき。

コンコン、と車のドアを叩く音がした。

顔を上げ、窓越しに外を見る。そこに映ったのは、派手に整った、ひと目で目を引く顔。

白崎野乃……。

数年ぶりでも、伊原綾...

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