第42章 全身が軽い

伊原綾音の怒りは頂点に達していた。北野隆也は慌てて言い訳を重ねる。

「俺とあいつは、一線なんて越えてない。ただ、お前らが身内だからさ。仲裁してやろうと思っただけだ」

「仲裁? あんたに? 何様のつもり。浮気は好きにすればいいけど、わざわざ私のところまで来て吐き気を催させないで。私が普段おとなしいからって、調子に乗ってるんじゃないの?」

「もう一度私を不快にさせたら——そのはした金なんて捨てていい。雲峰をS市から消して、あんたを一文無しで叩き出す。信じないなら、やってみなさいよ」

怒涛の罵倒を浴びせたあと、伊原綾音は通話をぶつりと切り、椅子の背にもたれて大きく息を吐いた。

人を罵るな...

ログインして続きを読む