第44章 彼女の手を握る

娇やかな声が家の中を突き抜けた瞬間、突風みたいに小さな影が駆け込んできた。澄川琉生が振り向くと、子どもが一直線に部屋へ飛び込んでくる。

杏ちゃんは興奮で目をまん丸にしている。

伊原綾音は手を止め、娘へ視線を移す。胸の奥がふっと揺れて、思わず笑みがこぼれた。

「それは杏ちゃんが可愛すぎるからだよ。奏斗も、話したくなっちゃったんだね」

褒められた杏ちゃんは太陽みたいにぱっと笑って、伊原綾音を小さな手で招いた。そして耳元に口を寄せ、こそこそと囁く。

「ママ、澄川奏斗ね、夜もあたしたちと一緒に寝るんだって。でも、おじさんには内緒だよ」

伊原綾音は事情を察したように目を細め、「わかった...

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