第55章 嫉妬する

伊原綾音は岩坂浩一に呼び出され、車の脇に立ったまま、彼の言葉を聞いた。

「伊原さん。あなたと北野隆也のことは調べさせてもらいました。大学の頃から付き合っていたそうですね。なのに真緒には、『彼とは感情なんてない、恩返しのために結婚しただけ』と言った。……あれは北野隆也に言わされたんですか?」

伊原綾音は少し距離を置いて立ち、冷えた目で岩坂浩一を見返した。過去はきれいに洗われている。今日ここへ来たのも、準備の上だろう。そう思いながら、彼女は口を開く。

「岩坂さん。私と北野隆也は、名目上の夫婦です。そこだけは誓ってもいい。嘘は一つもありません。キスすらされたことがないんです。夫婦の営みなんて...

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