第59章 呼び方

金縁の眼鏡をかけた男だった。肌がやたらと白い。彼女が見てきた男の中でも、群を抜いて白い。ダークトーンのシャツがその白さをいっそう際立たせ、整った所作も相まって、ぱっと見は紳士――ただし、その皮を被った獣みたいな気配が滲んでいる。

久岡家の人間……?

見覚えはない。それでも礼儀として、伊原綾音は小さく頷いてみせた。

男はあっさり名乗った。

「久岡明礼です」

やはり久岡家。けれど久岡明礼という名は、久岡家でも表に出てくることが少ない。顔が分からなくて当然だ。

「久岡さん、何かご用ですか」

綾音の声は、温度がない。

「北野社長にご用でしょう。呼んできましょうか」

好意に見せかけた...

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