第63章 本当に痛い

「何してるの? この何年も雲峰の案件、全部あんたが回してきたじゃない。なんで身一つで追い出されなきゃいけないの?」

「怖がらなくていい。明日あいつが署名を拒んだら、裁判にすればいいのよ。協議書があるんでしょ? 負けるわけないじゃない」

部屋の奥から、江見瑠璃の憤りに満ちた声が響いた。

伊原綾音はベッドに腰かけ、ふう、と息を吐く。

「この間にいろいろあって……結局、傷ついたのは杏ちゃんだった。杏ちゃんのことは……ほら、身の上が繊細でしょ。これ以上、巻き込んで傷つけたくないの」

「それに、仮に株を取り返しても、落ち着いて暮らせる気がしない。北野隆也がしょっちゅう押しかけてくるかどうか以...

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