第67章 お茶に何か入ってる

伊原綾音は白崎野乃を見つめた。拘留所から出てきて以来、顔を合わせるのはこれが初めてだ。思わず目で追ってしまう。相変わらず作り込まれた化粧――なのに、目だけが以前より濁って暗い。視線が合うたび、背筋に冷たいものが走る。

ふいに、小林梅子の言葉が脳裏に蘇った。拘留所で精神的に少しおかしくなった、という話。どうやら嘘ではなさそうだ。綾音は口元だけをわずかに吊り上げ、しかし声は氷みたいに淡々と告げる。

「そう呼ばないで。私たち、もうとっくに無関係だから」

白崎野乃が唐突に立ち上がり、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。

「……同じ屋根の下で十年以上も暮らしたのよ? そんな簡単に、縁を切れるわけない...

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