第68章 試してみたい

伊原綾音は、茶に何か混ぜられていると気づいた。反射的に久岡明礼へ視線を投げると、向こうもこちらを見ていた。含みのある目――まるで最初から全部わかっていたみたいに。

(何をするつもり……?)

「どうした、黙っちまって」久岡明礼は気長に待つ口ぶりだった。

伊原綾音は体の奥からせり上がる熱を押し殺しながら言う。

「久岡さん。私を誘う誠意って、茶に汚いものを混ぜることなんですか」

久岡明礼は相変わらず涼しい顔で、さらりと返した。

「そうでもしなきゃ、お前は久岡グループに入る気にならないだろ」

「卑怯……」

吐き捨てるように言って立ち上がり、扉へ向かう。だが半分も行かないうちに、背後か...

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