第7章 お前がほしい

伊原綾音は契約書を手にしているのに、どうにも心が落ち着かなかった。

澄川琉生のボディガードが、なぜここにいる。

まさか――何か気づかれたのでは。

部屋の前まで行き、千成を見上げて胸の奥がざわつく。すると、千成が口を開いた。

「伊原さん、琉生さんがお呼びです。上に来てください」

伊原綾音は二拍ほど固まり、問い返した。

「……何か用件ですか?」

「行けば分かります」

千成は余計なことは言わず、ただ手で促した。

この状況で引き返す選択肢はない。娘は、彼の手元にいるのだから。

最上階。

高級スイートに足を踏み入れると、杏ちゃんの姿はなかった。窓際に立つ男がひとり。背を向けている...

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