第8章 不倫相手

「この件は俺が片をつける」

澄川琉生は感情の起伏もなくそう言い、千成は手際よく通話を切った。

琉生のそばに十年以上いる。彼の苛烈さは何度も見てきたが、無礼を働いた相手に寛大になるところなど、ただの一度も見たことがない。

……本気になったのか?

いや、相手は既婚者だぞ……。

琉生さん、まさか不倫相手にでもなるつもりなのか。

江見瑠璃の家で、伊原綾音は杏ちゃんを落ち着かせてからリビングへ向かった。瑠璃は彼女の腕を引くようにして、澄川琉生のことを問いただす。綾音は先ほどまでの出来事を、必要最低限だけかいつまんで話した。

相手がS市でもっとも影響力のある澄川琉生だと聞いた瞬間、瑠璃は悲...

ログインして続きを読む