第80章 隠れる

澄川琉生は彼女を抱き寄せた。「疲れたろ。今夜はよく眠れる」

掠れた声が落ちるや否や、また唇を重ねようとする。伊原綾音は本当に限界で、不満げに押し返した。

「澄川琉生、いい加減にして」

さっきまで「先に寝たのはおまえだろ」と言っていたくせに、じゃあ今のでおあいこだろう。まだ何を望むのか。

澄川琉生は鼻で笑う。「終わんねぇ」

そう言い切ると手首を掴み、そのまま口づけた。溜め込んでいた不満を今夜のうちに全部埋め合わせるみたいに。伊原綾音は力で敵うはずもなく、次第に彼の手口にほどけていく。

車内は決して狭くはない。けれど、飽くことを知らないこの男にとっては、どうにも勝手が悪いらしい。

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