第81章 怒った

伊原綾音は胸がどくんと跳ねた。さっきは焦りすぎて、どこか変じゃないか確認する暇もなかったけれど、切り替えは早い。

「ママが持ってきたの」

そう言って、話題をすり替えるように可愛い子たちの注意をそらした。

「もう歯みがきした?」

「したー」

「した」

二人が声をそろえたせいで、スリッパの件はあっさり頭から抜け落ちた。

「じゃあ先に朝ごはん、できてるか見てきて。できてたら先に食べてて。ママは顔洗って着替えるから、そのあと学校まで送るね」

今の伊原綾音は、とにかく二人を早く部屋から出したかった。杏ちゃんは目が鋭い。余計なものを見つけられたらたまらない。

いつも通り、杏ちゃんは深く...

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