第82章 私と同じ

三浦昇は話を聞き終えた瞬間、言葉を失った。信じられないものを見るように伊原綾音を見つめる。名家の令嬢が、そんな目に遭っていたなんて。

父親に何かが起き、そのうえ自分まで——この数年、どれほど苦しかったのだろう。

たぶん、それが彼女が表舞台から姿を消した理由だ。

四年前、S市で伊原家の名はあまりに大きかった。伊原南に不幸が起きるや、S市の上流連中は、才色兼備の伊原綾音へと一斉に目を向けた。

三浦昇も覚えている。あのとき、ある男が声高に言いふらしていたのだ——伊原綾音は自分のものだ、奪う奴がいたらただじゃおかない、と。

だが、なぜかその男のほうが先に事故だか不祥事だかで姿を消し、話は立...

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