第86章 会ったことはある

川東浬は肩をひくひくさせて笑い、笑い終えると口の悪さ全開で言った。

「昇さん、知ってるでしょ。ああいうの、琉生兄が気にしたことありましたっけ」

三浦昇もそれには同意らしく、考え込むようにちらりと視線を走らせ、薄い唇を開く。

「琉生。おまえ、昔……伊原さんに会ったことあるのか?」

澄川琉生は酒をひと口含み、目を細めて見返した。

「おまえは会ったことないのか」

「ないな。噂なら聞いた」三浦昇が眉を上げる。

「俺も会ったことないっすよ。伊原さんの名声は、耳にしただけ」川東浬はそこまで言うと、途端に身を乗り出した。

「この前、道で見かけたんですけど……マジで、息止まりました。あとで名...

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