第91章 嘘のつけない女だ

伊原南は娘の顔を見て、瞳に浮かぶ戸惑いを読み取った。彼女が何を考えているかも手に取るようにわかる。茶壺を持ち上げ、湯を注ぎながら言った。

「一度だけ会った」

「親父さんに連れられてな。なかなかのやり手だった」

――澄川琉生は、本当に父に会ったことがある。嘘じゃなかった。

なのに、父が澄川の父親を助けたことを琉生は知っていながら口にしない。その上で取引を持ちかけてきた。いったい、どういうつもりなのだろう。

「お父さん。腕が立つ人でも、結局は商売人だよ。利益が第一。向こうが恩を返すって言うなら、私は受け取る。今回だって、彼が私を助けた分、私も彼に案件をひとつ回した。お父さんの分の借りは...

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