第7章

携帯を握る手が微かに震えるが、無理やり冷静を保とうと努めた。

実際のところ、今更話すことなど何もない。

私と彼の間にあったのは、ごく短い恋愛関係だけ。最後は円満に別れ、何のわだかまりもなかったはずだ。

「もう遅いですよ、藤原さん」

私は自分の声が出来る限り平静に聞こえるよう心掛けた。

「何か御用でしたら、明日にしていただけませんか」

「いや、今でなければならない」

藤原の声は異常なほど冷たく、いつもの穏やかな口調とはまるで違っていた。

「知っているだろう、俺は一度決めたら目的を果たすまで諦めない性格だ。君が応じてくれないなら、俺が何をしでかすか、自分でも分からない」...

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