第5章

 ついに、子供がいなくなった。

 私は病室のベッドに横たわり、無機質な白い天井を見つめながら、あろうことか安堵の吐息を漏らしていた。

 病室の外から、小林美月の金切り声が聞こえてくる。

「琉生、子供を失った意味、わかってるの!? 天野晴彦にどう申し開きするつもり? あの子に、もう一度子供を産ませてよ!」

 黒木琉生は、長い間黙っていた。

「美月……あいつは死にかけたんだ」

 彼の声は嗄れ、疲労が滲んでいる。

「もう一度なんて、あいつの体が保たない」

「それがどうしたの?」

 美月の声がさらに甲高く響く。

「あの子が死んだら、別の女を探して産ませればいいじゃない! ねえ琉生...

ログインして続きを読む