体外受精が成功してから、私がただ妹の代理出産の道具でしかなかったことに気づいた

体外受精が成功してから、私がただ妹の代理出産の道具でしかなかったことに気づいた

大宮西幸 · 完結 · 18.1k 文字

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紹介

体外受精が成功した日、私はやっと黒木琉生に騙されていたことを知った。
彼は私をただ妹の代理出産の道具としか思っていなかった。
秘密がばれた後、彼は私を試し、殺人を強要した。「撃てないのか?それじゃ俺の女らしくないな」
逃げようとしたが、彼に捕まった。
軟禁され、アレルギー食品を無理やり食べさせられて胃洗浄まで受け、鉄の鎖でベッドに繋がれたまま彼が妹の元へ行くのを見せつけられた。
涙は枯れ果てたが、ついに銃の握り方を覚えた。

チャプター 1

 体外受精から半月後、医師からついに妊娠の知らせをいただいた。

 私は逸る気持ちを抑えきれず、この吉報を黒木琉生に伝えようとした。

 だが、二階の個室の前まで来たとき、中の話し声が耳に入ってきた。

「黒木様、やはりお見事でございます! 二年前のあの婚約披露宴での仕込み、完璧でしたね」

 部下がへつらうような笑みを浮かべて言った。

「薬を盛って、情事の現場をでっち上げ、小林家から小林美晴を追い出させる。天野の若様はすぐさま小林美月さんと婚約……あのお嬢様、自分の純潔に責任を取ってくれるんだと信じ込んで、まあなんと可愛らしいことでしょう」

 階段に足をかけたまま、私は凍りついた。

 その、小林家を追い出された「お嬢様」というのが、私――小林美晴だ。

 二年前。小林家と天野家の婚約披露宴で、私は何者かに薬を盛られ、意識が朦朧とする中で黒木琉生と関係を持ってしまった。それを両親と天野晴彦に目撃されたのだ。

 父は激昂して絶縁を宣言し、天野晴彦はその場で妹の小林美月へと乗り換えた。

 唯一、黒木琉生だけが私を抱きしめ、責任を取って妻にすると言ってくれたのに。

「当時は誰もが、なぜあのような女と結婚するのかと首を傾げましたが……まさか美月お嬢様がお子様に恵まれないと分かった今、姉である彼女に跡継ぎを産ませるとは。恐ろしいほどの計算ですね!」

「天野の若様も、その能力だけは優れているらしいです。すぐに身ごもられました」

 黒木琉生の声は淡々としていたが、そこには確かな優越感が滲んでいた。

「子供が生まれれば、美月も天野家での地位を盤石にできるだろう」

 瞬間、世界が音を立てて崩れ落ちた。

 私のお腹の中にいる子は……義理の弟の子だというの?

「女なんてのは、少し優しくすれば簡単に騙せる」

 黒木琉生は続けた。

「天野晴彦が欲しいのは小林家とのパイプだ。美月が産めないなら、姉に産ませればいい。どうせ同じ小林と天野の血だ、母親が違おうが関係ない」

 視界が涙で歪む。私は逃げるように踵を返した。

「姐さん?」

 酒を運んできた若い組員が階段を上がってきて、立ち尽くす私を見て目を丸くした。

 個室の会話がピタリと止む。

 次の瞬間、ドアが勢いよく開かれた。

 大股で出てきた黒木琉生の視線が、涙に濡れた私の顔を捉えた。

 彼は目を細め、怪訝そうに尋ねた。

「美晴? なぜ泣いている」

 二年連れ添えば分かる。彼は疑り深い男だ。

 会話を聞かれたのではないかと疑っている。

 私は咄嗟に嘘を吐いた。

「さ、さっき上がってくるときに人とぶつかって……足を挫いちゃって」

「我慢しようと思ったんだけど、でも……」

 唇を噛み締め、涙を流しながら訴える。

「すごく、痛くて」

 黒木琉生の瞳が暗く沈んだ。

「そんなに痛むのか?」

 彼が近づいてくる。後ずさりしたい衝動を必死に抑え、私はその場に踏み止まった。

 次の瞬間、身体が宙に浮く。お姫様抱っこだ。

「行くぞ。誰がぶつかったのか顔を見せろ」

 彼は私を抱いたまま階段を下りていく。一階のホールで談笑していた客たちは慌てて道を開け、数十人の組員たちがすぐに周りを囲んだ。

「俺の女にぶつかったのはどいつだ」

 氷のように冷徹な黒木琉生の声が響き渡り、会場は瞬時に静まり返った。

 心臓が早鐘を打つ。

 誰でもいい。どうせこの結婚自体が嘘で塗り固められたものなのだ。今さら嘘が一つ増えたところで何だというのか。

 私は震える指を上げ、人混みの中にいた若い組員を指差した。

 男の顔色が瞬時に蒼白になる。

「く、黒木様、俺はそんなこと……」

 黒木琉生は片手で懐から拳銃を抜くと、その黒い銃口を男の頭に向けた。

 客たちが悲鳴を上げて後退るが、誰一人として逃げ出そうとはしない。

「やめて!」

 私は彼の腕にしがみつき、銃口を下げさせようとした。

「もういいの、たぶん私が不注意だっただけだから……」

「美晴」

 黒木琉生が私を見下ろす。毒蛇のような危険な眼差しだ。

「やられっぱなしで引き下がるなんて、俺の女らしくないな」

 身体が強張った。

 彼は私を床に下ろすと、その手に拳銃を握らせた。

「こいつがやったと言うなら――君が殺せ」

 冷たい鉄の感触が掌に張り付く。

 震えが止まらない。

 耳元に彼の吐息がかかる。それはまるで毒蛇の威嚇音のように、耳を打った。

「なぜ撃てない? まさか、俺に嘘をついているのか?」

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