第6章
火葬炉の炎が、分厚い防爆ガラス越しに地下室一帯を赤く染めていた。
たった数時間。あれほど意気揚々としていた国際的ピアニスト、智則は――まるで命の芯を根こそぎ吸い取られたみたいに、別人になっていた。
二十歳は老け込んでいる。
丹念に整えていた髪は灰色にくすみ、ぼさぼさに乱れ、仕立てのいいスーツは血で汚れ切っていた。
智則は、骨壺を抱える七海の前に膝をつき、涙で顔を濡らしながら懇願する。
「抱かせてくれ……七海、頼む。文香を一度でいいから……」
七海は鼻で笑うと、容赦なく足を振り抜いて智則を床に転がした。
「文香は冷たくなって箱の中よ。あんたの愛人はまだ待ってるんでしょ...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
