第7章
病院の消毒液の匂いがまだ鼻に残っているというのに、父はまるで魂の抜けた屍みたいに、よろめきながら家へ駆け戻ってきた。
二階へ狂ったように駆け上がり、主寝室のドアを足で蹴り飛ばす。
「文香! 文香の服はどこだ。宝飾品は!?」
空っぽのウォークインクローゼットを、父は引き出しも棚もめちゃくちゃにひっくり返して探った。
けれど、ない。何ひとつ。
父は勢いよく振り返り、真っ赤に充血した目で、ずっと後ろをついてきた私を睨みつけた。
「どこだ! お前の母さんの物は、いったいどこへ行った!?」
私はドア枠にもたれ、腕を組んだまま、冷めた目でその滑稽な姿を見下ろした。
「燃やした...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
