第8章

 時間は、死者のために足を止めてはくれない。

 現実は、最初からおとぎ話なんかじゃない。男は、深く愛してくれた女を自分のせいで死なせたと知って涙を流し、悔いて絶望することはある。けれど、あなたのために一生喪に服して独りで生きることはない。

 実際、私が十八になるまで持たなかった。

 母・文香が死んでから五年目。父が掲げていた「生涯再婚しない」という深情な誓いは、あっさり綻びた。

 あの巨大な屋敷の、骨の髄まで沁みる沈黙に耐えられなくなった父は、若い女の子を連れ帰ってきた。

 綺麗な金髪。そして何より――母とほとんど同じ色の、澄んだ蒼い瞳。

 その日、父はその代わりをリビングのソフ...

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