第9章
直哉視点
午前二時、俺は紗奈のベッドの傍らに座り、どんどん冷たくなっていく彼女の手を握っていた。
外では雪が降り、白峰市全体を白く染めていた。部屋に響くのは、まるでカウントダウンのように静かな機械のビープ音だけだった。紗奈の呼吸は分を追うごとに弱くなり、彼女の胸が上下するたび、俺の心臓は締め付けられるようだった。
何か言いたかった。行かないでくれと、そう懇願したかった。だが、言葉にならなかった。
「直哉……」紗奈の声はかろうじて聞こえるほどで、俺は身を乗り出した。
「ここにいる。すぐそばに」俺は彼女の髪を指で梳きながら言った。
「ありがとう……最後に、愛がどんなものか教えて...
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チャプター
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