第101章

応接室に、ふたたび静けさが戻った。

神谷蓮は踵を返して一ノ瀬紗月を見る。鋭かった眼差しが、すっと柔らかくほどけた。

「怖かったか?」

「アイツ程度で?」一ノ瀬紗月は鼻で笑い、すぐに表情を引き締める。「あんたの執務室で話す。大事な用件」

神谷蓮は目を細めてうなずき、彼女を社長室へ通した。扉をしっかり閉め、ブラインドのリモコンを押す。

外からの視線も音も遮断されたのを確かめてから、一ノ瀬紗月はスマホを取り出し、レストランで録った音声を再生した。

録音の中では、富元謙人と神谷信太の腹の探り合いと算段が、生々しいほどはっきり響く。

再生が終わっても、神谷蓮の顔色は変わらない。長い指が、...

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