第113章

神谷蓮は彼女をじっと見つめたまま、しばらくして喉の奥で低く笑った。

彼は契約書を引き戻し、瞳の奥にある甘さと敬意を隠しもしない。

「いい。君の決断を尊重する。――願いが叶うといいな」

翌日、九条家本邸。

九条百合子はソファに腰を下ろし、ローテーブルの上に置かれた限定のヒマラヤ・バーキンを見つめて、目を輝かせた。最高級レザー特有の艶が、室内の光を吸っては返す。

「伯母さま、これ……かなり手を尽くして、海外のコレクターから高値で譲ってもらったんです」

隣に座る一ノ瀬美琴は、行儀よく微笑みながらも必死に媚びる顔を作る。

「この帝都で、こんなに気品があって華やかな方にこそ似合うバッグで...

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