第117章

「殺人未遂?」一ノ瀬紗月は冗談でも聞かされたみたいに、唇の端をひどく冷たく吊り上げた。

ゆっくりとソファへ歩み寄って腰を下ろす。九条百合子には余計な視線すらくれない。

「お母さま、年を取って頭まで鈍ったんですか? アトリエの廊下には高画質の監視カメラがあります。あの人がヒステリックに私へしがみついて離さなかっただけ。足を滑らせて勝手に転んだんです。私を通報したいなら、今すぐ110番すればいい。警察が連れていくのが私か、迷惑行為であの人か――見ものですね」

「口が達者ね! 屁理屈はいい!」百合子はまるで聞く耳を持たない。持っていたプラチナのバッグから、用意していた書類を引きずり出すと、テ...

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