第118章

九条湊の顔色が一瞬で鉄青に変わり、こめかみの血管がどくどくと脈打った。

神谷信太の仕掛けに乗るため、動かせる手持ちの流動資金はもちろん、担保ローンで引っ張った金まで全部突っ込んでいる。いまの自分は、外側だけ立派な空っぽの器だ。送金できる金など、どこにもない。

「……もう少し待て!」九条湊は歯を食いしばり、苛立ちまぎれにネクタイを乱暴に緩めた。「こっちも資金が回ってない。お前は何が何でも時間を稼げ。場を崩すな!」

「ですが九条社長、神谷信太のほうが――」富元謙人が言いかけたところで、九条湊は不機嫌に通話を切った。

だが、息をつく間もなく、スマホがまた震える。

胸の奥のざわつきを押し殺...

ログインして続きを読む