第122章

三日目の夕暮れ。九条湊は濃い煙草の匂いと疲労をまとったまま、江景の高級マンションの玄関を押し開けた。

いまの彼は、誰も信じない。一ノ瀬紗月だけを信じる。

紗月さえ傍にいるなら、まだやり直せる。もう一度、這い上がれるはずだ。

リビングは主照明が落とされ、薄闇が広がっていた。湊は足音を殺し、書斎の前で立ち止まる。

扉は少しだけ開いていて、隙間から白い光が漏れていた。

覗き込むと、一ノ瀬紗月がパソコンの前に座り、黙々と設計図を修正している。画面には、息をのむほど豪奢なジュエリーのデザイン。帝王緑の深い色と、パライバの透きとおるような青が、ひとつの呼吸みたいに溶け合っていた。

右下の署名...

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