第124章

一ノ瀬紗月はナースたちのひそひそ話など意にも介さず、まっすぐに801号室の前まで歩いた。

ノックはしない。ドアノブを握り、そっと下へ押し込む。

病室の中では、一ノ瀬美琴がベッドの縁に腰かけ、湯気の立つ燕の巣の椀を両手で抱えていた。

わざとらしくお腹を突き出し、甘ったるい声でとろけるように言う。

「湊、ひと口だけでも飲んで? 午前中ずっと煮てたの。ここ二、三日で痩せちゃったし……」

九条湊はベッドにもたれ、眉間に深い皺を寄せている。苛立ちが顔に張りついていた。

追い払う言葉が出るより先に、ドアが押し開けられた。

反射的に顔を上げた湊の視線が、一ノ瀬紗月の水のように冷たい瞳と正面か...

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