第12章

まさか――同じ病院。それどころか、同じフロアにいる可能性だってある。

一ノ瀬紗月は、胃の底がむかむかとせり上がってくるのを感じた。胸の奥には、氷水を吸った綿がぎゅっと詰め込まれたみたいに、冷たくて、重くて、息がしづらい。

ちょうどそのとき、看護師が点滴台を押しながら入ってきて、交換の準備を始める。

「一ノ瀬さん、少しは楽になりましたか?」

小さな声。それでも、廊下にいた九条湊の足を止めるには十分だった。

彼は反射的に声の方を見た。ガラス越しの視線が、ベッドの上の一ノ瀬紗月と正面からぶつかる。

その瞬間、九条湊の顔から表情が消えた。雷に打たれたみたいに硬直し、瞳に走ったのは驚愕――そ...

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