第123章

計画が潰れた悔しさと、友人の安否への不安がないまぜになり、彼女の呼吸は一瞬だけ乱れた。

一ノ瀬紗月は深く息を吸い込み、無理やり心を落ち着かせる。

化粧室の扉を押し開けると、廊下の照明がやけに眩しい。

ぎこちない足取りで歩き出す。いつもなら余裕をまとった背中が、今はどこか魂の抜けたように見えた。

角を曲がったところで、背の高い影が行く手を塞いだ。

神谷蓮がシャンパンのグラスを手に、壁にもたれたまま電話をしている。

紗月の青い顔色と、落ち着かない視線に気づいた瞬間、彼は即座に通話を切り、眉を寄せた。

「どうした」

低く、揺るがない声。人を鎮める力がある。

紗月は顔を上げた。荒海...

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