第124章

九条湊は二人の間に無理やり割って入り、長い腕を伸ばすと、まるで鉄の枷みたいに一ノ瀬紗月の腰をきつく抱え込んだ。

「神谷社長」

九条湊は顎のラインを強張らせ、目には露骨な敵意が宿っている。

「今夜の宴は、お口に合いましたか?」

神谷蓮の視線が、九条湊の――所有欲をむき出しにしたその手へと滑る。唇の端に、かすかな嘲りが浮かんだ。

返事はしない。ただ一ノ瀬紗月に軽く会釈すると、踵を返し、喧噪の人波へまっすぐ消えていった。

神谷蓮の背中を見送る九条湊の瞳に、いっそう濃い陰が落ちる。

彼は紗月へ向き直り、腰に添えた指にじわりと力を込めた。

「近づくな」

声を落とし、警告だけを刺す。

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