第125章

「中にいらっしゃいますか。ホテルの警備です、定期確認に参りました!」

係員の大声が、廊下に響いた。

返ってきたのは、息が詰まるほどの沈黙。

十数秒ほどして、カチャリ、と鍵の軽い音がした。

重たいオーク材の扉が、内側からほんのわずかに開く。

扉の陰に立っていたのは、九条湊だった。

荒い息。肩が上下し、胸が大きく波打っている。

きっちり撫でつけていたはずの髪は乱れ、ネクタイは引きちぎられたみたいに曲がっていた。シャツの襟元のボタンは二つ飛び、赤くなった肌が覗いている。

そして何より目に刺さったのは、顎の骨のあたりに残った、拭いきれていない鮮烈な口紅の跡――燃えるような赤。

九条...

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