第14章

神谷蓮は車のドアにもたれるように、いかにも暇そうに立っていた。背は高く、姿勢はまっすぐ。生まれつき人を寄せつけない冷ややかさが、その場で苛立ちに任せて声を荒らげる九条湊を、ただ駄々をこねる子どもみたいに見せてしまう。

薄い視線が、九条湊が一ノ瀬紗月の手首を強く掴んだ指先へと滑る。神谷は口元に、ほとんど笑みとも呼べない弧を刻んだ。

「九条社長、ずいぶん楽しそうですね。奥さまが病院で二日寝てても顔も出さず、連絡ひとつもしない。退院ってなった途端、出てきて“俺の女だ”って主張ですか」

九条湊はみっともなく紗月へ向き直り、焦りを噛み殺すように言い募った。

「紗月、こいつの言うこと聞くな! 俺は...

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