第143章

彼は片手で競り札を弄びながら、姿勢ひとつ崩さなかった。

「九条社長の“顔”なんて、神谷グループには要らない」

神谷蓮の声は氷みたいに硬い。譲歩の余地など、最初から存在しない。

「商売は、実力勝負だろ」

衆目の前で面子を潰された九条湊は、怒りが頭頂まで突き上げた。だが、どうにもならない。

競売人は追加の札が上がらないのを確認すると、木槌を振り下ろす。

「4,000万ドル、落札! 神谷様、おめでとうございます!」

どっと拍手が湧き、九条湊は椅子に沈み込んだ。顔色は最悪だ。

彼は隣の一ノ瀬紗月へ向き直り、みっともない苛立ちを必死に隠しながら言う。

「紗月、見ただろ。神谷蓮は自己中...

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