第145章

彼女は待ちきれなかった。愛してやまない「湊」から、こき下ろされ、腹の子まで堕ろせと言われたとき――一ノ瀬美琴がどんな顔をするのかを。

一ノ瀬紗月は鼻で笑い、録音データに暗号をかける。あとは頃合いを見て、美琴へ送るだけだ。

翌朝。

カーテンの隙間から射し込む陽光が、部屋の床を細く切り取っていた。

九条湊は、割れるような頭痛に叩き起こされる。こめかみを押さえ、重いまぶたを開けた。

――シングルベッド。

昨夜の記憶が、砕けたガラス片みたいに脳内で寄せ集まっていく。

個室で浅田智弘と飲んでいた。そこへ……一ノ瀬美琴が入ってきて、テーブルの上で――。

そのあと、浅田智弘に部屋まで送られ...

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