第150章

一ノ瀬紗月はパソコンの前に座っていた。

モニターの冷たい光が頬を照らし、横顔の輪郭だけを鋭く浮かび上がらせる。ブルーライトカットの眼鏡。その奥の視線は一点に縫い止められ、指先はペンタブの上をせわしなく滑っていた。

九条湊が、食事の載ったトレーを机の隅へそっと置く。

「紗月、何か食べろ」

声はいつもより低く、柔らかい。気遣いの形をした命令。

「……そこに置いといて」

紗月は手を止めない。

湊は彼女の背後に立った。細い首筋。強張った肩。張り詰めた空気が、触れれば切れそうだった。

近づきたい。昔みたいに、頼られたい。

衝動に押されるまま、湊は手を伸ばし、彼女の肩にそっと触れた。

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