第19章

言いたげにしながらも言い出せない――喉元まで出かかった言葉が、そこで引っかかっているような顔だった。

「言いたいことがあるなら、はっきりおっしゃって」

一ノ瀬紗月の声は、驚くほど静かだった。まるで天気の話でもしているかのように、淡々と。

「回りくどいのは結構です」

九条湊は図星を突かれ、目をわずかに揺らした。あまりにも澄んだ彼女の視線をまともに受け止めきれず、そっと逸らす。

苛立たしげに髪をかき上げると、やがて彼は、自分ではうまく取り繕えたつもりの口実を口にした。

「最近、会社で少し問題があってな。資金繰りも、ちょっと厳しい」

低く沈んだ声。綻びひとつない、見事な嘘だった。

「...

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