第34章

一ノ瀬美琴は大きく息を吸い込み、頬に残った涙の跡を乱暴に拭った。

鏡の中に映る、みっともない自分。――その瞳の奥に、刃みたいな冷えた光が走る。

一ノ瀬蘭の言う通りだ。今は自暴自棄になっている場合じゃない。自分には子どもがいる。まだ、ひっくり返す余地がある。

一晩かけて心を鎮め、翌朝、美琴は別人のように仕上がっていた。

わざわざ選んだのは、シャンパンカラーのボディラインに沿うワンピース。くびれも脚線も、計算通りに際立つ。昨夜泣いた痕跡は丁寧なメイクで消し、長い髪は大きく巻いて肩に流した。胸を張り、ヒールの音を鳴らしながら、艶やかに――九条ホールディングスへ乗り込む。

受付の女性は一瞬だ...

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